2022.09.25
本場のエネルギーに触れ本気でゴスペルを志しました。
──初めて歌と触れ合った思い出やきっかけを教えてください。
Hyca 私は3歳からピアノ習っているんですけど、めちゃくちゃピアノはヘタなんですよ(笑)。父が歌ってるのを聴いてたので、歌はなんとなく口ずさんだりしていました。一応ピアノも習ってはいたので、小学生の頃から自分で適当に曲を作って遊んでましたね。本格的に歌手を志そうと決めたのは、中学生で初めて人前で歌った時です。
──お父様は音楽関係のお仕事ですか?
Hyca 父親は職人で、全然音楽とは関係ない仕事ですけれど、かつて歌手を志していたので歌はうまいです。世代的にも哀愁漂う演歌ですね。
──中学の時に歌ったのは、どんな曲ですか?
Hyca 文化祭でSPEEDさんの「WHITE LOVE」を歌いました。お友達と一緒だったから立てたのであって、当時ひとりでステージに立てる勇気はなかったですね。
──「WHITE LOVE」は、一番高いパートを受け持ったんですか?
Hyca そうですね。たぶん今に繋がるのかなと思うんですけれども、私は地声がそんなに出なかったんですよ。だけど、あの時は本番で奇跡的に出たんです。その時の歓声とか自分の体感がすごく気持ち良くて、それが忘れられないっていうのがあります。
──その後、どういった形で音楽を続けていきましたか?
Hyca 高校卒業後、音楽専門学校に通っていた時に研修でニューヨークに行く機会があり、本場のゴスペルに触れたんです。とにかく現地のエネルギーに圧倒されてしまいまして、本気でゴスペルをやろうと志すようになりました。それまで授業としてゴスペルのレッスンも受けてはいたんですが、その時はただ「カッコいい音楽だな」くらいしか思っていなくて。歌詞の意味もわからないし、LOVEって普通に恋愛のLOVEだと思ってたり、それほど深いものだと知らなかったんです。そこからはいろんなクワイアに入ったり、自分でオリジナルのグループを作ったりして、主に大阪や東京でゴスペルを中心に活動しながら、単独でシンガーとしてもライブ活動をしたりしていました。
──まさに「カルチャーショック」ですね。
Hyca はい、ソウルが全然違いましたね。その研修では私たちが教会で歌ったんですが、目の前の黒人さんが涙を流して倒れていている姿を見て、「何でだろう?」と思ったんです。私はただカッコよくて好きな音楽を歌ってるだけなのに、なぜこの人はこんなにも魂が震えているような感覚に陥っているのかなっていう不思議があって。そこからいろんな歴史とかを調べるようになりました。調べていくうちに、逆に私が申し訳ないなっていう気持ちも芽生えてきて……。自分なりに少しは理解をしながら歌っていきたいなって思いました。
──そんなHyca先生がお好きなアーティストは?
Hyca 私は誰かのファンということはあまりないんですけれども、リアーナさんとかクリスティーナ・アギレラさんとか、ルトリシア・マクニールさんみたいな、地声感の強い女性アーティストの影響は受けていますし、すごく憧れでしたね。
環境の差で習えないなんて、そんなのはおかしいって。
──ヴォイストレーナーをやろうと思ったのは、いつ頃からですか?
Hyca 私が地方に住んでいて、学生の時はオンラインのレッスンとかまだなかったので、トレーナーを選ぶことができなかったんですよね。やっぱり数が少なかったですし。でもその時に私が思ったのは、学びたいっていう気持ちがあるのに学べないっていうのは、おかしいと(笑)。それがたとえ環境のような宿命的な要因であっても、そんなのは覆してやると。地方においてもプロフェッショナルなトレーニングはやっぱり必要だな、別に私が都会に出なくても地方でプロフェッショナルのトレーニングをやれば、別に来ればいいじゃんっていうことで。私は地元でヴォイストレーニングをやりたいっていうのが、最初にトレーナーをしたいと思ったきっかけです。環境の差で習えないなんて、そんなのはおかしいって。
──スクールを始められたのは何年ぐらい前ですか?
Hyca 2014年ですね。
──トレーニングの技術論みたいなものは、どこから始めたんですか?
Hyca 最初は普通に一般的なヴォイストレーニングといいますか、よくネットで検索できるような知識を自分で集めたり、そういう資格を取ってみたりしていたんですけれど、私が目指して求めている地声感の強い歌声……そこに到達できなかったんですね。そこでREBELTING発声法を受講しました。
──それは、どうやって見つけたのですか?。
Hyca 当時「BELTINGは海外でしか受けられない、日本にトレーナーはいない」と言われていたんですけれども、たまたま音楽仲間の先輩が「今度ロサンゼルスから日本にBELTINGのトレーナーがやってくるよ」っていう情報を聞きつけて、急いで受講しに行ったんです。それがきっかけで、しっかりBELTINGのコースを受講したっていう感じです。その方がREBELTING発声法の代表、CHICO氏ですね。私はBELTINGコースとワンボイス動画コースっていうのを受講していて、今も彼女を師事しています。
──それは自分が求めていたものでしたか?
Hyca 求めていた以上の価値はありました。はい、人生が変わったっていう感じです。
──そうなんですね。その中で自分にとって衝撃的だった教えは?
Hyca まず、理論がほとんど通用しなかったってことです。私が今まで勉強したことは何だったんだろうっていうぐらい(笑)。もちろん理論は決して間違ってもないですし、否定されるものではないんですけれども、それ以前に「人間本来の声の出し方っていうのがあるんだよ。そこにはいつも感情があるよね。その感情に沿って声を出していけばいいんだよ」って。自分でそれが腑に落ちた時に、衝撃が走りました。
──言い方は悪いですけど、それまでは頭でっかちだったってことですか?
Hyca そうですね。当時は歌に自信がなかったので、外側に知識をつけるしか自分に自信をつける方法が見つからなかったんです。一生懸命に頑張ってはいたんですけれども、やっぱりいざとなったら足がすくんでしまうっていうような状態が続いていて……。そこでREBELTING発声法を受講して、その時にまず「やるか、やらないか」っていう意志が一番重要だということで、何よりも自分自身と向き合っていくこと。「テクニックも身体の使い方も、どれも大事だけれども、一番大事なのはマインドなんだよ」っていう教えがありました。マインドということは私が最も恐れていたこと、一番向き合いたくなかったところだったんですよね。自分の自信のなさに、向き合いたくないんですよ(笑)。必死に隠してきたものを曝け出す、脱ぎ捨てる、手放していく。その恐怖っていうのはありましたけれども、でもその恐怖を手放したからこそ、本当の意味で自分自身の感情に沿って歌を歌っていくことができるようになった。それが今はすごく喜びです。
──やはりマインドの部分から発声そのものが変化していくことで、歌が変わるということなんですよね?
Hyca そうですね。発声法が変わるっていうことです。声の出し方がまず変わってきます。
──REBELTING発声に出会った頃は、スクールを始めていたんですよね?
Hyca はい。でもぶつかっていたというか、つまずいていた限界を感じていた時でしたね。
──REBELTING発声法を軸に教えだしてから、生徒さんの伸びは変わりましたか?
Hyca 本当にビックリするくらい変わっていきました。私も変わりましたし、生徒さんも変わっていきました。なんか、私が不安になるぐらい生徒さんの人生も変わっていくのを見て、最初は「私、大丈夫かな?」ってちょっと不安になるぐらい。それぐらい生徒さん一人一人が自分の人生に誇りを持って、自信を持って、たとえ音楽の道じゃなくても突き進んでいく。自分の意志を持って進んでいけるっていうところをたくさん生徒さんに見せていただいたので、私も生徒さんからたくさん勇気をもらっています
本当に地声のまま高音に繋がっていく感じになりますね。
──Hyca先生がTAKEYA Vocal Lessonでやられているレッスンは、どんなスタイルですか?
Hyca 基本的にはまず一回のトライアルレッスンを受けていただいています。そこで「身体から声を出すって、こんなんだよ」っていうのを体感していただきます。とはいえ脳や筋肉が記憶するのって一回ではやっぱり難しいので、そこからは5回ずつのコースになっています。
──5回レッスンの内容は?
Hyca レッスン前半の5回はとにかくダイナミックに声を出すっていうこと。それはすごくシンプルなようで、実は皆さんが抑え込んでいる感情だったりするので、まずは感情をそのまま解放していくことを行ないます。身体から声を出す。そうやって地声で高音まで出していけるようにしていくんですが、それだけだと多少力みとかもまだ残っているので、次の5回で質を高めていくっていうことになります。
──歌は歌いますか?
Hyca 歌は毎回歌いますよ、ワンコーラスだけ。最初は生徒さんが歌いたいと思った曲をやってもらってます。できるだけ地声感のあるものなんですけど。
──地声感のある曲っていう言葉で伝わりますか?
Hyca まあ伝わらなくても最初は「こういう感じになりますよ。この人の声はちょっと柔らかいミックスヴォイスですけれども、最初はこういう風に力強くなりますよ。そこから整えると、この人のような声も手に入れられますよ」っていう説明をします。
──先生の中では、地声をまずしっかり出せるようなトレーニングをしているわけですね。
Hyca はい。もうそれは大前提です。話し声って地声ですよね。話すように歌うのがBELTINGなので。やっぱり地声が強化されないと高音に到達しても弱々しくなってしまいます。
──地声を強化するために、一番大事なことは?
Hyca 頭で考えないことですね。考えてる間に筋肉は整わなくなってしまうので。いきなりワーってビックリしたり、面白いことがあったらいきなり爆笑したり、それが人間の本来の動きだと思います。その時に筋肉っていうのは完璧に全身コーディネートされてるわけなので。それを頭で考えて、「ここをこうして、ここをこうして」っていうのは無理です。だから頭で考えずに、その時の感情を持っていく。力強く発声したかったら力強い感情を持ってくるっていうようなやり方ですね。テクニック的に言うと地声の強さ、質感が全然変わります。薄っぺらい感じとか弱々しい裏声とか、そういうのから本当に地声のまま高音に繋がっていくっていう感じになりますね。あとは持っているマインドが全然変わります。
──例えば、地声じゃなくて、すぐに高い声が出したいんだけど……みたいな人には、どういうアドバイスをしますか?
Hyca ミックスヴォイスを習得したいという生徒さんは圧倒的に多いです。そういう方にはこう尋ねます。「このまま弱々しい地声のままミックスヴォイスを習得して、また高音に悩むのと、しっかり地声を矯正して整えてから、安定したミックスヴォイスを習得するのと、どっちがいいですか?」っていう風にまず確認します。私自身が頭でっかちだったからこそ、そこは寄り添える部分だと思います。
──レッスンで一番大事にしている基本姿勢、生徒さんと向き合う際に大切にしていることは?。
Hyca 基本姿勢としては心と身体と声。これがひとつになるっていうことです。最終的な判断として、それができていたらもうOKっていう感じなんですけれども、考え方としては、先ほど少し言ったんですけれど「人間にもともと備わっている身体の動きをもう一度取り戻しましょうね」っていうことです。赤ちゃんだったり小さいお子さんっていうのは、それがまだ残っているので、すごく大きい声を地声で出したって、全然喉は傷まない。「あれをもうすっかり忘れてしまったよね」っていうことを生徒さんにお伝えしてます。生徒さんも「そう言えばそうですね。でも今さらどうやってやるんですか?」ってなる。「赤ちゃんの時から今までいろいろ付け加えてきたかもしれないけれど、これからは付け加えてきたものを少しずつ手放していきましょう。脱ぎ捨てていきましょう。そして本来の自分の姿に一回戻していきましょう」っていうことをお話しします。
──なるほど。耳が痛いです(笑)。レッスンでは、かしこまってやらずにリラックスした格好でやることもあるそうですね。
Hyca そうです。寝っ転がってやってもらう時もあります。目の前に人が一人いるだけで絶対に多少の緊張はしてしまうので、そこをぶっ壊していきます(笑)。そのためには私もやっぱり自分を出さないといけないので、もともとこんな感じですけど崩した感じでしゃべっていて、かしこまった感じではないです(笑)。ロックヴォーカリストは寝転んでもシャウトしたり、高音とか出したりとかしてると思うんですけれども、そのように「どんな状態でも別に出そうと思ったら出せるよね」っていうのを体感してもらう。高音は形や姿勢にこだわり、しっかり考えて構えて出すものじゃなくて感じて出すものなので、歌唱への認識を書き換えていただくことを、体感とともに行なっています。
Belting発声が人々にどんな風に伝わっていくかを、私自身も感じてみたいです。
──TAKEYA Vocal Lessonにおける生徒さんの年齢層は?
Hyca 小学生から60代ぐらいまで幅広いですね。20代と30代が特に多くて、プロ志向だったり、現在進行形で活動されている方が多いです。バンドをやっていたり、ゴスペルクワイアのメンバーだったり。
──ここはカラオケボックスですが、だいたいここに生徒さんに来てもらってレッスンするわけですね。ロードサイドだから駐車場も広々としているし、地方では確かにいいですよね。
Hyca そうなんです。でも、ほぼマイクは使わないですけどね。カラオケ慣れしている方は音があったほうがいいかもしれませんが、基本的に私は必要ないって思っています。
──ゴスペルディレクターも行なっていらっしゃるそうですね。
Hyca はい。敦賀市にあるクワイヤグループ「T-Voice Choir」という6人グループで、ライブやイベント出演などをしています。
──スクールでの発表会などは?
Hyca 生徒さんの発表会自体はしてないんです。ただ、生徒さん同士で動画を投稿し合うコミュニティをTAKEYAで作っています。個人情報は私しか知らないんですけれども、そういう場所を作ってみんなが自分を撮って投稿してお互いにやり取りするっていうようなものです。そこから何か繋がりを持ってやりたいとなれば、私を通して繋がれればという想いです。
──歌スクはオンラインで日本中、世界中の人と繋がるのですが、楽しみにしていることはありますか?
Hyca オンラインになるのでエネルギー感っていうのはもしかしたら薄れるかもしれないんですけれども、それでも私は画面越しでもエネルギーって感じられると思います。その圧倒的な声っていうのをお互いに交わしながら、オンラインのヴォイストレーニングっていうよりも、大きく言えばエネルギーの交歓みたいな感じで、それぐらいのつもりでやっていけたらいいなと思っています。トレーナーの方も含め、いろんな方がおられると思うので、触れ合って関わって、皆さんどんなふうにされているのかなとか、そういうことをぜひ見てみたいなと思いますし、そこで私のこのBelting発声が人々にどんな風に伝わっていくのかを、私自身も感じてみたいです。
──では、歌スクをご覧の皆さんにメッセージを。
Hyca 私が思うに、心と声って本当に密接に繋がってるんですね。なので、もしこの私のところにトレーニングに来ようと思ってくださる場合は、「自分自身とちょっと向き合うかもしれない」っていう覚悟をしていただけると、私も全力でサポートをさせていただきますので、お待ちしております。
撮影:ヨシダホヅミ
TAKEYA Vocal Lesson
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福井県敦賀市内カラオケ店
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営業時間:10:00~20:00
定休日:不定休
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